新しい働き方の一つとして注目されているのが社員の個人事業主化です。
昨日、広告代理店最大手「電通」が、2021年1月から社員全体の3%に相当する約230人を「個人事業主」に切り替えるという報道がされました。
電通は一部の正社員を業務委託契約に切り替え、「個人事業主」として働いてもらう制度を始める。まずは2021年1月から全体の3%に相当する約230人を切り替える。
電通では副業を禁止しているが、新制度の適用を受けると兼業や起業が可能になる。他社での仕事を通じて得られたアイデアなどを新規事業の創出に生かしてもらう考えだ。
最大のメリットは「インセンティブ」
個人事業主になった場合の最大のメリットは会社員にはない「報酬額(インセンティブ)」が挙げられます。
固定給与以外で自分の頑張り次第では、インセンティブを上げることができるのです。
- 契約期間は10年間
- 電通時代の給与を基にした固定報酬
- 利益に応じてインセンティブ
- 他社と業務委託契約を結ぶことも可能
- 11月に設立する新会社と業務委託契約
新制度の適用できる人は、営業や制作、間接部門など全職種の40代以上の社員となっています。
約2800人を対象に募集したところ、230人が該当したということになります。
良さそうにも見えるこの契約ですが、早期退職をする形になるので、人件費縮小などリストラ策としてみられます。
個人事業主としてのデメリット
「報酬」もあがり「他社との仕事も可」となれば、腕に自信のある社員であれば良い条件に思います。
しかしデメリットもあることを理解しておかなければいけません。
とくに会社員であれば維持できていた待遇がなくなる可能性もあります。
- 企業年金
- 交通費
- 年次有給休暇(特別休暇含む)
- 賞与
- 健康診断(人間ドック)
- 保養施設の利用
- その他福利厚生制度
細かいところもでもありますが、これらは会社員でいることで自動的に与えられていた権利でもあります。
今回の個人事業主化では、その適用が外されるとなるとメリットがあるとは言い切れません。
業務上の責任範囲も明確にしなくてはいけない
仕事のうえで、個人事業主になると責任も全て任されるようになります。
今までは会社が守ってくれていた環境ではなくなるからです。
仕事で失敗をした場合に、多額の損失を被るような契約になっていないか注意が必要です。
「会社」と「個人事業主」が対等であるべきなのですが、大手「電通」相手に対等になるとは思えません。
一方的な仕事の振り方をされてしまえば、他社の仕事もできない単なる下請けになってしまうかもしれません。
過去に電通は「残業」などの労働条件が過酷であることが社会問題化していました。
今回の仕組みが「新しい働き方」として双方にメリットのある内容であればよい施策だと思います。
しかし「個人事業主」という言葉が良いイメージとして先行しないように、時間を掛けて検証してほしいと思います。