「世帯年収1000万」が一番損な理由

世帯年収が1000万円は損

東京都は、私立高校授業料の実質無償化制度を拡充し、対象となる世帯の年収を760万円未満から910万円未満に引き上げる方針を明らかにしました。

 

「誰もが教育を受ける権利があり、子供を育成することが東京の発展につながっていく」という主旨のもとでの政策になります。

 

しかし910万円は、共働きで世帯年収であれば超えてしまう家庭が多いとの意見が出ています。単純に夫婦ともに正社員で500万円の年収があれば、合わせて1000万円になるのです。

 

残念ながら900万円の年収だとしても税金を引かれた手取りでは、東京都内で家族で生活するには、住居費なども高く思ったより余裕がないのが現状です。この政策で恩恵を受ける層は限られているのかもしれません。

「世帯年収」の定義とは

世帯とは、住居や生計を共にする生活体のことを意味します。わかりやすく言うと同じ家で暮らす家族が「世帯」にあたります。

 

そして「世帯年収」とは、世帯を構成する人々の年収の合計を指します。

世帯年収例

夫(45歳):会社員・年収700万円
妻(40歳):パート・年収100万円
子(14歳):中学生:収入なし
子(11歳):小学生:収入なし
世帯収入:800万円

また、年収とは税金や社会保険が差し引かれる前の「税込年収」のことになります。いわゆる「手取り年収」ではありません。

 

「世帯年収」の平均は

日本の世帯全体の年収は、560万円程度と言われています。共働き世帯・シングルマザー世帯など、さまざまな家族形態がありますが全てを含む全体の平均年収です。

世帯年収の分布
0~200万円 17.9%
200~300万円 13.3%
300~400万円 13.8%
400~500万円 10.6%
500~600万円 8.9%
600~700万円 7.4%
700~800万円 6.2%
800~900万円 5.6%
900~1,000万円 3.6%
1,000万円以上 12.6%

引用: 国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)

 

「世帯年収」が1,000万円でも余裕ではない

年収1,000万円というと「平成29年分民間給与実態統計調査(国税庁)」によると年収1000万円以上の収入がある人は、給与所得者全体の約4.5%です。

 

ちなみにサラリーマンなど給与所得者数は5811万人で、平均給与は432万円になります。

 

共働き世帯が増えているため、例えば夫婦のどちらかが年収700万円でどちらかが年収300万円という世帯、あるいは夫婦のどちらも年収500万円という世帯も多いと思います。

 

そう考えると、夫婦の合計年収となる「世帯年収が1000万円以上」の家庭はこれより多いはずです。

 

「裕福で余裕のある生活」をイメージすると思いますが、世帯年収1,000万円が必ずしも裕福とは限りません。

 

住んでいる地域の物価や、家族構成によって出費は大きく変わります。

 

東京都内で中高生の子どもを持つ家庭であれば、たとえ世帯年収1,000万円であっても、贅沢な暮らしをしていると貯金もできない状態の家計になっている家族も多いのです。

 

「世帯年収」が1,000万円が損な理由

「世帯年収1000万円が一番損」と言われる理由は何でしょうか。

「世帯年収」が1,000万円が損な理由
  • 所得税額が増える
  • 所得制限で児童手当が少なくなる
  • 高校無償化に対象にならない
  • 子供の医療費助成が受けれない
  • 保育料の料金が高くなる

所得税額が増える

年収が増えても累進課税による所得税率が適用されるので「手取り」が比例して増えていきません。年収800万円から年収1000万円になったとしても手取りが200万円も増える訳ではないのです。むしろ1000万円のほうが多く税金が取られてしまうのです。

 

しかし共働きで世帯年収1000万円の場合は、夫婦それぞれの年収で納税額を算出しますので、全体の納税額はこれより少なくなる傾向にあります。

 

所得制限で児童手当が少なくなる

子どもがいる家庭には児童手当を受け取れます。中学生以下が対象となりますが、この児童手当には所得制限があります。

 

子ども2人のモデル世帯では、年収が960万円以上で児童手当の支給がなくなり、子ども1人当たり月額5000円の特例給付に変わります。

 

児童手当が満額もらえるとすると15年間で200万近く受け取れます。しかし年収が960万円を超えて月5000円の特例給付になった場合だと90万円の支給になります。ここでも年収が1000万円であれば受給できなくなり100万円近くの損となるのです。

 

高校無償化に対象にならない

先ほどの東京都が打ち出した高校無償化も引き上げた年収金額は910万円です。当然ながら年収1000万円は所得制限上では対象外になります。

 

子供の医療費助成が受けれない

最近では子供の医療費助成がある自治体が増えてきています。多くの自治体で年収800万円位から所得制限があります。

 

自治体によっては所得制限があるため通常の医療費も負担をすることになります。※東京23区は所得制限のない地域になっています。

 

保育料の料金が高くなる

共働きの場合は保育園に子供を預けることが必須になってきます。この保育園に支払う保育料も所得によって金額が変わります。

 

所得に応じて保育認定の保育料は8段階と細かく分かれています。年収1,000万円の場合は一番高い階層に該当するため負担が大きくなります。

 

まずは節税をすることを考える

「所得制限」による児童手当、医療費助成、高校無償化などの各種補助は、世帯年収が高い家庭には不満が出てしまう内容です。

 

頑張って勉強して働いて年収1,000万円を稼いでいても、結局は税金も多く支払っている人が子供を私立高校に行かせるのが経済的に厳しくなるというのは矛盾するのです。

 

今後も「所得制限」による補助の対象は増えていくと思います。しかも条件が複雑すぎて、どれくらいの年収が良いのかがわかりにくい内容になっています。

 

そうなれば年収をコントロールするのではなく、下記のような節税効果のあることを実行して少しでも現金が残る方法を検討したほうが賢明です。

サラリーマンで節税効果のある方法
  • ふるさと納税
  • 住宅ローン控除
  • 医療費控除
  • NISA(少額投資非課税制度)
  • IDeCo(個人型確定拠出年金)
  • 青色申告控除(副業している方)

サラリーマンで税金関係を年末調整しか対応しておらず、確定申告をする習慣がない人には、節税といってもあまりなじみがないことです。

 

しかしサラリーマンだからといって何も節税対策をしないのはもったいないことです。サラリーマンでも効果的に手取り額や貯金を増やすことが可能です。

 

特に青色申告控除に関しては、申告する内容によっては大きな節税効果をもたらします。「年収は上げる」でも「節税もしっかりする」が賢いサラリーマンのスタイルだと思います。

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