不動産投資をするうえで「出口戦略」という言葉をよく聞きます。「出口戦略=売却」という解釈が多く、最終的な損益を示すものだとされています。不動産投資も株式投資も「売却」をして初めて利益が確定すると言われています。
ここ最近の不動産投資関連する本には、「数年後に売却して利益のでる物件を購入すべき」と書かれています。個人的には「ババ抜き不動産物件」を助長するような話なので、あまり好意的には受け止めていませんが、不動産投資を専業とされているのであれば必要不可欠な選択肢なのでしょう。
また、不動産投資に関わる事業者は「売買利益」が基本の売り上げになるので、何とかして不動産物件を流通することが必要です。不動産を販売すると同じくらい、不動産を所有しているオーナーには売却を進めるように積極的に「出口戦略」を提案してきます。
「出口戦略」といっても必ずしも他人に「売却」しなくてはいけないというわけではありません。家族を持っているオーナーであれば「相続」という形で渡すこともできますし、また土地を更地にして「建て替え」をすることもできます。
「出口戦略」を提案する本やブログを見ていると多くが「地方RCなどの億単位の大型物件」を想定した内容になっています。RC物件はエレベータ維持管理費、固定資産税など運営費が多額です。大規模修繕を実施することがあれば、今までのキャッシュフローをすべて使わないと賄えきれない場合もあります。
「運営コストが高くを維持ができない」「キャッシュフローが想定利回りほどない」といった話になると「売却」せざるを負えなくなっていきます。木造アパート物件であれば「建て替え」も比較的容易にできますが、RC物件であればそう簡単にはいきません。
今の不動産投資市場の傾向では、金融機関の融資条件の正常化により借入できる人も限られています。それは売買できる人が減ってくるということにつながります。ましてや融資できる人は、不動産投資で実績のある人なので、売却前提で初心者が購入した「ババ抜き物件」を選択することはないでしょう。そうなると簡単には売却できません。
不動産投資コンサルティング会社が高金利の金融機関と一緒になって提案してきた「地方中古RC一棟物件を5年後に売却」は短期間でキャッシュフローと投資利益を得るには有効な手段だったかもしれません。しかし実際の5年後に計画通りに実行することは難易度としては高いと思います。
「地方中古RC一棟物件は、キャッシュフローが出て、多額の売却益が出すこともできる」という話ではなく「地方中古RC一棟物件は、売却するしか利益が出ない」のかもしれません。サラリーマンが長期保有で堅実に不動産投資をする対象の物件としては、あまり適していないのかもしれません。