新型コロナウイルスの感染拡大により外出自粛の動きが強くなってきています。東京ディズニーランドやUSJの休園を筆頭に観光施設への利用の制限が日毎に強くなっている状況です。
その余波は交通機関や宿泊施設など旅行業界に大きく影響を与えています。ここ数週間の動きで国内旅行の市場は厳しい状態です。
国内線予約が足元で4割も減っており、すでに全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)が国内線の減便を発表しています。ホテル業界も繁忙期になる3~5月の予約は前年比5割近く減り、国内旅行取扱高の損失は3千億円近くに達する見通しとの予想が出ています。
「民泊ビジネス」に多大な影響が出始めている
局所的なものではなく全国的な広がりになっているため、改善の糸口が見えない状況ではあります。ホテル業界がすでにこの状態になるので「民泊ビジネス」も当然に大きな打撃を受けています。
民泊はそもそものところ、インバウンド(訪日外国人旅行)頼みでのビジネスです。一般的なホテルが訪日客が予約であふれるところを補う形で民泊需要がありました。
民泊は従来のホテルとは違って所有しているマンションだけで始めることができます。開業まで半年以内でできることもあり、増加した訪日外国人旅行者需要に適したビジネスでした。
そしてサラリーマンの不動産投資家の方も利回りが良いという点で多くの方が「民泊ビジネス」に参入してきました。私の周囲でも港区あたりの中古ワンルームマンションを使って民泊ビジネスを始めて会社を辞めた人もいるくらいなので、相当額の収入があったのだと思います。
また有名な観光地では、民泊として運用することをあてこんでマンションが乱立してしまったエリアもあります。投資目的のマンションになるので相場よりもさらに高い価格での売買になります。
そのためそのエリアは民泊バブルに引きずられる形で周辺の地価・家賃が上がり、もとからいた住民が住みにくい環境になってしまったのです。
そしてこのコロナショックによる民泊利用者減で悪循環の連鎖が広まりはじまっていると思います。感染拡大で連日報道されている北海道では、民泊の収益が8割~9割減といった状況だという話も聞きます。
民泊ビジネスは非常に難しい状況になってきました。コロナウイルスが終息すれば再び盛り上がるかと思いますが、それまでビジネスを継続するには手持ちに余程の現金がなければ難しくなってくると思います。
ホテル業界に進出した不動産投資家たち
さらに最近の不動産投資家の動きとして「ホテル業界」に進出している人もいます。有名な不動産投資家の方々も新築系の不動産投資の究極なモデルとして「ホテル」への投資を行っている人もいます。
新築アパート系で一世を風靡した「TATERU」も次の事業モデルの軸として「ホテル業界」への進出を画策していたと言われています。収益性、資産性を考えると「ホテル」が魅力的なビジネスなのかもしれません。
先ほどはインバウンド需要に大打撃という話でしたが、すでに国内出張を停止している企業も増えてきています。そうなるとビジネスホテル業界へのキャンセル状況も増えていくため、宿泊施設事態の売上確保に見通しがつきません。
また維持費という点では相当な金額のコストが発生します。通常の不動産投資であれば最低限の水道光熱費やインターネット費(無料提供の場合)などの固定費がかかります。
しかしホテルの維持費は不動産投資とは異なります。まず大きいのは従業員の人件費です。売上がなくても従業員のコストが発生します。これは民泊の比ではないと思います。
まだまだ先は読めない状況ですが、不動産投資から派生した投資に対して厳しい現実がまっているのかもしれません。海外への不動産投資も節税対策にストップがかかり、民泊も思わしくない状況、さらにコストのかかるホテルは難易度の高いビジネスになっています。
投資に対して果敢にチャレンジすることは良いことだと思いますが、ここまで世間の状況が変わると慎重に進めるしかありません。場合によってはこの数ヶ月の間に勇気ある撤退も必要になってくるかもしれません。
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