東証一部上場企業である日本最大手の住宅ローン専門金融機関「ARUHI(アルヒ)」投資用マンションへの融資をめぐる仲介案件に不正があったと報道されました。
すでにARUHI側は「事実と異なる」として自社ホームページに意見を掲載していますが、昨日の株価は一時、制限値幅の下限まで落ち込みました。
真意は定かではないですが、報道側も確証のある情報だとして掲載をしています。不動産投資に関する不正融資に関しては、シェアハウス問題でスルガ銀行が行政処分を受けることになりました。
多くのメディアにも取り上げられ、スルガ銀行の経営層も入れ替わりましたので、一定の終息を迎えたと思っていたのですが、まだまだ氷山の一角だったということでしょうか。
目次
住宅ローン専門金融機関「ARUHI(アルヒ)」とは
アルヒ株式会社は、ARUHIは日本初のモーゲージバンクです。銀行ではありません。住宅ローンに関しては最大級の金融機関になります。
家を購入するのであれば、一般的には「住宅ローン」を組みます。住宅ローンと言えば銀行のイメージがあると思います。アルヒ株式会社は他の金融商品を使う銀行とは異なり住宅ローンを専門に取り扱う金融機関になります。
「フラット35」という住宅ローンにおいて2010年度より9年連続で【フラット35】融資実行件数が第1位というトップクラスの金融機関です。
「フラット35」とは
「フラット35」は各金融機関と住宅金融支援機構が連携した住宅ローン商品です。住宅金融支援機構とは「国土交通省と財務省が管轄する独立行政法人」になります。
- 全期間固定金利で借入ができる
- 質の高い住宅の取得の場合は優遇商品がある
(【フラット35】S、【フラット35】リノベ) - 保証人不要
- 繰上返済手数料不要
- インターネットで申込できる
各金融機関は金利条件などの設定を行い差別化を行っています。その中でもARUHIの「フラット35」は取り扱いが群を抜いていました。
ARUHIの「フラット35」特徴
数ある「フラット35」の中でもなぜ「ARUHI」が支持されたのでしょうか。
- 審査が早い
- 諸費用ローンがある
- 保証料0円、繰上返済手数料0円
- 返済口座は全国1,000以上の金融機関でできる
- 様々な属性でも借入ができる
- 全国に窓口がありサポートが充実している
「審査が早い」「様々な属性でも借入できる」という点では、スルガ銀行の不正融資と共通する部分でもあります。
特に様々な属性という点では、個人事業主・契約社員・派遣社員・パート・転職後間もない方も、給与明細が1か月分出ているなら、審査の対象としていました。
これができる理由としては「フラット35は物件の審査重視 」によることが大きいです。借りる方の属性条件は銀行系住宅ローンよりもハードルが低いのが特徴です。
しかしこれらの特徴を悪用することで今回の不動産投資の不正融資に繋がることが出来てしまったようです。
やってはいけない不動産投資のオンパレード
今回の報道内容を見る限り、不動産投資としては「やってはいけない」内容のオンパレードでした。このような悪質な条件が重なると、残念ながら購入者もリカバリーしようがありません。
- 対象が新築ワンルームマンションであった
- 住居目的での借入ではなかった
- 提出資料が改ざんされていた
- 購入者の属性が高くなかった
- サブリース契約でされていた
対象が新築ワンルームマンションであった
現在、不動産投資の融資で確実に融資が出るのは「新築系」です。特に新築ワンルームマンションはファミリータイプより値段が高くなく融資も受けやすい価格です。
また開発する側からすれば、限られた土地に対して多くの戸数を作ることができるので、総トータルでの売上も多く見込めます。
しかし問題なのはこの価格です。報道では「2018年に東京・練馬の1Kのマンションを3000万円弱で買った。」とされています。
新築の場合は広告費や営業コミッション費などが多く積まれているため高くなる傾向があります。実際に売却をしたとしても相当良い土地でなければ同額以上では売れないと思います。
どのデベロッパーかは不明ですが「相場より高く買っている」可能性があります。
住居目的での借入ではなかった
先ほどの新築ワンルームマンションですが「自分で住む」というのであれば問題ないのですが、不動産投資として部屋を第3者に貸し出すこととなると話が変わってきます。
「フラット35」を始めとした住宅ローンは「自分で入居すること」が大前提で借入をすることができます。人に貸し出すとなると契約違反になります。
転勤など仕方ない場合もあると思いますが、今回の場合は最初から不動産投資目的としているので、斡旋した不動産会社は相当な悪質な取引をしたことになります。
提出資料が改ざんされていた
今回の報道では「物件購入時に無職だったにもかかわらず、架空の会社に勤務していることにされ、アルヒへの融資の申込書には年収562万円と記されていた」とされています。
スルガ銀行は通帳の改ざんがあったとされていましたが、今回の報道が本当であればさらに悪質な方法で融資を得るための属性を意図的に作ったということになります。
これは不動産会社が単独で行うものとは到底思えません。少なくとも両者が結託しなければ出来ない内容です。
購入者の属性が高くなかった
家の購入や不動産投資をするための融資を受けるには、社会的信用や金融資産など条件が必要です。しかし今回の場合は無職で会ったり、働いて間もない20代女性だったりします。
「個人事業主・契約社員・派遣社員・パート・転職後間もない方」でもOKとしている点を悪用し高額な相場より高いワンルームマンションを売り付ける業者がいたことが非常に残念です。
サブリース契約でされていた
極め付けはレオパレスなどでも問題になっていたサブリース契約を結ばせていたことです。入居者の有無に関わらず安定的に家賃収入が入るとされていますが、実際にはそうではありません。
契約途中での家賃の減額や契約変更も普通に行われてしまうのです。これはオーナーにとっては不利な条件になっている場合が多いのです。
そのような契約にも関わらず、不動産投資に全く興味のない購入者に「家賃保証のサブリース契約だから、入居者の有無にかかわらず賃料が安定的に入ってくる。デメリットは何もなく予備知識も必要ない。断る理由がない」と執拗な勧誘していたとされています。
フランチャイズ店舗の責任ではない
今回の審査資料の改ざんがあったのはアルヒの神奈川県内の2つの店舗に集中しているということです。
スルガ銀行も横浜支店で多くの不正融資があったとされていますが、本社が東京にあるとすれば、神奈川県には実施しやすい環境があるのでしょうか。
この2店舗はアルヒの直営ではなく、フランチャイズ店舗とのことです。もしこの不正融資が事実だとしたら「フランチャイズだから関係ない」とは言ってほしくありません。
東証一部上場企業として「第三者委員会」など外部からの調査を行い内容を明らかにして欲しいと思います。このままウヤムヤな状態で揉み消されてしまうと、また第3、第4の不正融資がでてくると思います。
少しづつですが不動産投資物件も価格も落ち着いてきたのと融資環境も改善しつつあるだけに、不動産投資全般に影響のないように「ARUHI」は動いていただきたいと思います。
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