なぜ不動産融資がバブルになったのか
アパートローンなど投資用不動産向け融資に関して、銀行や信用金庫など約500の国内金融機関を対象に金融庁が2018年秋に実施しました。
アンケート調査によると、投資用不動産向け融資の残高は9月末時点で33兆円。2年半で5兆円まで増加したという結果になりました。
全体の2割近くがこの2~3年間で増えたことを考えると、いかに不動産投資バブルだったということが改めてわかります。
同じバブルでも地価やマンション価格が高騰した1980年代末のような異常なバブル経済には至っていないのが特徴です。
物件の流通量が多かったのと同時に金融機関の審査が甘かったのではないかということです。
念願の不動産投資物件に満額融資が出て「買えて運が良かった」と思うオーナーもいれば、不動産会社の提案に何も考えずに「買わされてしまった」と嘆くオーナーもいると思います。
いずれにせよ不動産投資に対して世間が注目し始めたのには間違いありません。
2015年の相続税制改正をきっかけとして、土地所有者や富裕層を中心に節税目的の投資用アパート・マンションの建設が始まりました。
レオパレス、大東建託、東建コーポレーションのように昔から地方でのアパート経営を提案してきた会社にとっても好都合な展開でした。
そして「働き方改革」などによる副業解禁の追い風もあり、副収入や資産形成を狙った一般の会社員らの取得熱がさらに拍車を掛けました。
地方銀行による都市圏での営業を撤退
この展開に乗り入れたのが貸出先に悩んでいた地方銀行、信用金庫、信用組合などの地域金融機関です。
金融機関が不動産投資の融資に傾倒してしまった理由としては、主力の企業融資の採算が合わなかったことが大きいと言われています。
すでにマイナス金利政策下で収益が悪化した中で一定の利益が期待できる投資用不動産向け融資に参入しました。
個人の信用があれば、リスクの高い不動産関連融資を選ばざるを得なかったのではないでしょうか。
不動産投資の融資額が増え始めて2年前くらいから多くの地方銀行が東京や大阪の都市圏にこぞって支店や営業所を開設しました。
しかし最近は不動産投資自体を撤退をし始めたというニュースも聞きます。
書類審査は25%しか実施されていなかった
スルガ銀行自体は、先ほどのアンケートで記載のあった2年半前以上前からからすでに不動産投資への融資に積極的でした。
そのころは不正融資はなかったのかもしれません。他の金融機関が次々と参入してきたために競争が激化したため、異常事態に陥ったのではないかと思われます。
一番の問題は審査体制です。先の金融庁の調査によると、融資の実行に際して顧客の給与明細など審査書類を原本で必ず確認します。
しかし調査結果では実際に審査をしたのは金融機関は25%にとどまっていたということです。実に75%は書類審査をしていなかったということになります。
不動産仲介会社の審査も必要
投資用不動産融資は多くの場合、案件を発掘し持ち込む仲介業者が介在しています。
スルガ銀行の例では、行員が仲介業者と結託したり、悪質な業者による書類改ざんを見抜けなかったりとすべてが悪い方向に進んでしまいました。
この数年で新たに不動産投資のオーナーとなったサラリーマンの保護するためには、金融機関が仲介業者自体の信用力を精査することも必要だったと思われます。
結果、不正融資と失態を反面教師として、全金融機関の経営者は規律ある審査に向けて体制を総点検することが必須です。
まだこの不正融資問題はスルガ銀行が営業を再開したことで終わりになるではなく、引き続き周囲からの厳しい視線を浴びることになると思います。